オタクが好きなものを喋る時のあれ

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「あれは素晴らしいのです。先週着ていたものはLILIAの新作なのですが、この会社は老舗でその良いとこを出しつつ新しい流行をいち早く取り入れているのです。例えばこれまで研究を重ねてきた形、履き心地、生地の厚さ、ゴムの締まり具合は勿論のこと、やはりどういうものが履いている女性にとって気分が上がるか、また男性から見たときにより魅力的に感じるかということを長年のデータから分析し1つでも条件に入れようと頑張っているのです。さらに近頃最も好まれる色の発色をミリ単位で計算し、デザインも出来るだけ繊細にしています。LILIAの新作はこれまでの歴史が詰まっているのです」 と吉野はどこで情報を仕入れたのか不思議なくらい、そこの会社の営業の如くしゃべり倒した。そのことに今までぶちょうと言っていたのが嘘のように目を爛々とさせて前のめりに話すものだから若干松下は引いていた。 どんだけ好きなんだこいつ。そこに就職すれは良かったんじゃ。 松下が先程の吉野にあっけにとられていると吉野は言いたいことを全て言い終えたのか満足そうに微笑んだ。そしてグラスをもっていた手がだんだんと緩み、ズルズルと下半身が座布団を押して机に突っ伏した。 寝ると思ったよ。 「おーい!起きろ!よーしーのー」 机に身を乗り出して吉野の肩を揺するが全く起きない。 あーもーしょうがねぇなぁ。と松下は残りのものを平らげる。そこでふと、こいつの家に上がり込めるのではと思ったのは言うまでもない。
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