オタクが好きなものを喋る時のあれ

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それから2人は飲みながら会社の出来事を中心に愚痴ったりした。松下は仕事意外にも吉野に聞きたいことがいっぱいあったが、今まで干渉してこなかった分話し出しずらい。ビールは日本酒に変わり、芋焼酎を飲み始めたところで吉野は酔ってきたのか顔が赤く火照っている。 「お前まだ1杯目なのに本当に弱いじゃないか」 「ぶちょうはお強いですね」 ふふっと始めの笑い方よりも断然頬を緩ませてぶちょうと少し舌っ足らずで話す吉野。 なんだこの破壊力は。官能小説によく出てくる、濡れそぼった瞳が伏し目がちになり、桃色の口からはどうのこうののまさにそれじゃないか! 自分が弱いと知っているのか俺が3杯目なのに1杯しか飲んでいない。だけれど普段のピシッとした雰囲気は消え、ほわほわとした何だか変な空気感になっている。確かにこれは人前で飲まない方が身のためだ。仕事に対してもそれ以外にでも。 「ぶちょうは、下着、好きですか?」 「はい?」 「ですから下着ですよ、女性の」   突然何を言い出すんだこいつは。途中でモジモジしだして崩した足を正座にしたりまた崩したりして酒を飲むと緊張するのかと思っていたが、この言葉を聞くにどうやら恥ずかしがってしたらしい。酒で赤くなった頬がさらに赤くなる。 「まぁ、俺も男だしな」 俺が話を持って行きたいところに話の張本人から出ると思わなかった。吉野自身から話してどうなるのだろうかと知りたくて無難に答えてみる。 すると吉野は嬉しそうにそうですか。と少し間を置いて、 「あの日の下着はどうでしたか」 とこれまたド直球に質問を投げかける。さすがに少しは遠回りしてくるのかと思ったが酔いでそんな回りくどいことが出来なくなっているのだろう。あの日の痴態がフラッシュバックする。 「吉野はどうなんだ」 松下は吉野をずっと目を離さずに質問を質問で返した。吉野はずっと下を向いたままだ。 なんだこれは。なんかのプレイか。と頭の中で松下はツッコんだ。 もう2人の手は止まり、ここはもう居酒屋の雰囲気ではない。 「あれは素晴らしいのです。」 先程よりも吉野の声にはりがでた。しかし喋り方が少し幼い。 吉野はピーチカクテルがまだ少し入っているグラスを両手でグッと持ち、ゆっくりと松下を見上げる。 突然の吉野の変わり様に松下はなんか不味(まず)かったかと思ってしまった。 しかし吉野はとても気分が良いようだ。
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