考えない。それもあり、、、

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考えない。それもあり、、、

「おはよう御座います。おはよう御座います」 今日は調子が良い。天気は快晴で清々しいのがその理由かもしれない。いや、昨日珍しく早く寝たからかも。 どうでも良い理由を考えながら自分の席に着く。 今日は丸中製作所に行かないと。 今日するべきことを手帳を見て確認する。特に変わったことはない。吉野としては。 カタカタと提出する報告書を打つ。 「おー、おはよう」 あの低くくて落ち着く声が向こうから聞こえきた。それでも吉野の手はいつも通り止まらない。 「吉野、おはよう」 いつもと変わらない松下の挨拶。 少し俺に対しての態度が変わっているのではないかと思っていたが、そうでもないようで嬉しいのか寂しいのか分からない気持ちがする。 「おはよう御座います。部長」 こちらも普通に応えた。不自然なほどに。目がかち合うが、真っ直ぐに松下を見る。 松下は吉野がまた更に余所余所しくなるのではないかと危惧していたのか、なにも変わらない挨拶に少し目を見開く。 おかしい。なんかおかしい。 そんなことを松下は考えるが、吉野は昨日よりはっきりしているし、顔を向けてくれるのでこれで良いのか?と思ってしまう。 よし。完璧だ。 昨日の緊張はどこにいったのか、心の起伏が凪のように静かだった。これは一種の防衛機制なのかもしれない。嫌なことなのに逆に好きだという風に振る舞ってしまう。 この場合は松下のことが気になっているのに、気にならないような気持ちになっているということだ。 客観視すれば変な感じだが、当の本人は昨日よりも仕事に対して集中していると思っているようだ。 面白いくらい文章が思い浮かぶ。
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