君は、僕のヒーロー

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なんで、こんなことになっちゃったんだろう? 何をしても、もうサトシは帰ってこない。 あの日、見せようと思っていた特撮雑誌を、棺に入れてもらった。 そこに横たわっていたサトシは綺麗にしてもらって、顔も微笑んでいるようだった。 いつも、泊めてもらった日の朝、寝癖をつけて「朝飯どうしよっかー?」と言いながら二度寝していた時の彼を思い出して、奥歯を噛み締めた。 何ができるだろう? 自分が、サトシのために…そして、二度と、こんなことが起こらないために。 「ヒーローになりたかった」というサトシの夢は、叶わないままに終わってしまった。 それを継げるのは、自分しか、いない。 あとはもう、がむしゃらに進むだけだった。 20年。 現場の使い走りのバイトから始まった仕事は過酷だったけど。 生きてるから___自分は、彼が望んだ世界で生きてるから…そう思えば、何があっても歯を食いしばって耐えられた。 その日、アキラは紙袋を手に、丘に続く道を歩いていた。 春の日差しは暖かくて、桜の花びらがふわふわと舞っているのを見て、思わず頬が緩む。 ジャケットの胸ポケットには、あの時サトシの母からもらったメダルがある。 ベルトにはめ込んで、変身するやつだ。 彼が好きだった作品のアイテムで、特にお気に入りだったらしい。 ずっと、肌身離さず持ち歩いていた。 そのうちに、妻がお守り袋を作ってくれた。 あわただしい撮影現場では、無くさないようにと首にぶら下げて働いている。 ずっと一緒だった。 あの日から、ずっと。 そして、叶えた。
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