発覚

4/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
そこは丘陵地帯の高級住宅地の中でも上の方にある、大きな家だった。 鯨幕が張られた門構えは、どうみてもそういう業種で、強面の男性らが受付をしていて、アキラはタクシーから降りて一瞬後ずさった。 アキラに気づいて一人の男性が深々と頭を下げた。 警察署で、サトシの両親に付き添って来ていた比嘉という男、いわゆる“若頭”という役目らしい。 やり手のビジネスマンという風情だが、目つきの鋭さが半端なかった。 彼に伴われて家の奥に連れて行かれた。 「失礼します。サトシさんの学校の皆さまをお連れしました」 促された先に、憔悴したサトシの両親がいた。 「この度は…ご愁傷さまでした」 引率の藤森が頭を下げると、アキラもそれに倣った。 「みつどめくん?」 まとめ髪に黒い着物の女性、サトシのお母さんがソファから立ち上がり、アキラの両手を取ってぎゅっと握った。 包み込むようなその指は冷たくて、下げた頭を戻した時、その顔色は優れず、目元も腫れていたことに気づいた。 その背後にいた父親も立ち上がり、膝に手を当てるようにして深々と頭をたれた。 「遠いところを、ありがとうございます」 そう言ってアキラたちにソファをすすめた彼は、お母さんに「頼むわ」とだけ言い、部屋を出ていった。 入れ替わりに金髪に黒いスーツの若い男がお茶を持ってきたが、すぐに引っ込み、部屋は周囲の喧騒から切り離されたような静けさが漂った。 「本当に、満留くんと先生方にはお世話になって…」 「いえ…あの…僕の方が、ずっと、ずっとサトシに世話になってたっていうか…泊めてもらって、一緒に遊んで、レポートもいろいろ教えてもらって…サトシ、すごく頭良くて…気配りも凄くて…みんな、サトシのことが大好きで…」 思い出していたら、喉が、ぐっと詰まる感じがして唇が固まってしまった。 「サトシが、めったに電話してこないのに、時々かけてくると、ようあなたの名前が出てきてた…うちがこんなだから、あの子、掃除も洗濯も出来ないままに家を出てしまったでしょ?私が行こうか?って言うたら、あなたがいろいろ手伝ったり、教えてくれはるから困らないって。すごく嬉しそうに言うてたわ」 「そう…なんですか?」 「東京に出して、良かった、って思った。あの子があんなに楽しそうにお友達のこと話してくれる日が来るやなんて、想像もしてへんかったから」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!