5/9
前へ
/9ページ
次へ
「まだ生きている。医務室で手当てを受けているが、当然ながらお怒りだ」 「仕留め損ねたな」 「まったくだ」 ふたたび、会話の最中にベルの音が転がって来た。 草薙さんの鋭い眼差しが素早く向けられる。だが、入り口への視界を遮るように群青さんが立っている。誰が入って来たのか瞬時に確認が出来ない。一瞬にして緊張感が生まれた。だが、老婦人がカウンターへ向かっていくのが見えた。それを見た草薙さんの肩から力が抜けていく。マスターと老婦人の明るいやりとりが聞こえて来た。 「で、お前らはなにしてんだ?」 グラスに残った氷をカラカラ鳴らしながら訪ねて来た。 「梶さんと待ち合わせです」 明石が言うと、草薙さんは「へぇ」とわずかに笑みを浮かべる。 「そっか。あいつ頑張ってるか? ま、梶のことだから頑張ってんだろうな」 尋ねておいて、自分自身で片づけてしまう。 そんな相手に明石は物怖じもせず会話を続けた。 「梶さんも同じ組織の人だったんですよね」 「あぁ。もう辞めてどれぐらいだ? けっこう経つよな」 テーブルに肘をついた草薙さんが群青さんを見上げた。 「四年ぐらいか」 「そうだ、たしかハルが十二歳のときだったから、そのぐらいだな」     
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加