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「まだ生きている。医務室で手当てを受けているが、当然ながらお怒りだ」
「仕留め損ねたな」
「まったくだ」
ふたたび、会話の最中にベルの音が転がって来た。
草薙さんの鋭い眼差しが素早く向けられる。だが、入り口への視界を遮るように群青さんが立っている。誰が入って来たのか瞬時に確認が出来ない。一瞬にして緊張感が生まれた。だが、老婦人がカウンターへ向かっていくのが見えた。それを見た草薙さんの肩から力が抜けていく。マスターと老婦人の明るいやりとりが聞こえて来た。
「で、お前らはなにしてんだ?」
グラスに残った氷をカラカラ鳴らしながら訪ねて来た。
「梶さんと待ち合わせです」
明石が言うと、草薙さんは「へぇ」とわずかに笑みを浮かべる。
「そっか。あいつ頑張ってるか? ま、梶のことだから頑張ってんだろうな」
尋ねておいて、自分自身で片づけてしまう。
そんな相手に明石は物怖じもせず会話を続けた。
「梶さんも同じ組織の人だったんですよね」
「あぁ。もう辞めてどれぐらいだ? けっこう経つよな」
テーブルに肘をついた草薙さんが群青さんを見上げた。
「四年ぐらいか」
「そうだ、たしかハルが十二歳のときだったから、そのぐらいだな」
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