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俺は梶さんの離職時期よりも、ハルの年齢のほうが衝撃的だった。具体的な年齢を聞いたことはなかったし、小柄だとは思っていたが、あのサイズ感で十六ってことになる。そうか。そうなのか。
一方で明石は明るい表情で相槌をしている。知っていたんだろうか、驚きの様子はない。
群青さんは長い腕を組んで、深く頷いている。
「あの頃のハルは小さくてかわいかったな」
「いまもちっさいだろが」
「身長は伸びている。健やかなる成長だ」
「はいはい、どうも」
ふいに明石がのけ反るようにソファにもたれだした。
「ん?」
なにかを気にする素振りを見せた相棒をみて、すぐさま草薙さんは身を起こした。
通路に乗り出すと、群青さんの後方をのぞき込む。
「おしゃべりは楽しい?」
そこには牧野さんの姿があった。胸を張るように腕を組んで、言葉の割には攻撃的な眼差しで草薙さんを睨みつけている。自身の影に立たれていた群青さんは「お?」と呑気に振り返る。
草薙さんはどっかりとソファに座り込むと、グラスに残った氷を口に放り込んだ。
ごりごりがりがりと音をたてて噛み砕く。
「わかった。仕事は受けてやる。だが、あのいけすかねぇジジイには謝らねぇ」
そう言って力強く牧野さんを指さした。
「依頼人もそのボディガードも力いっぱい殴り飛ばしておいて、よくそんなことが言えるわね、あんた。面の皮の厚さは人のことどうこう言えないんじゃないの」
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