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腕を組んだまま、彼女は一切ひるまない。 なかば体当たりで群青さんを押しのけて、踵を鳴らして詰め寄って来る。 「そんなことして仕事が来なくなったらどうするつもりよ」 その言葉に草薙さんはにやりと笑った。 「脅してんのか?そんなことにゃならねぇって、それはお前や上層部が一番よく知ってんだろうが。ジジイを殴ろうが依頼を蹴ろうが、俺たちに仕事して欲しいってヤツは腐るほどいるじゃねぇか。あぁ?」 下から抉るように相手を睨みあげる。 「は?」 俺ですらそんな凄みに晒されたら怯んでしまうかも知れない。そんな威圧感を真っ向から受け止めて、彼女は腕を組んだまま悪態をつくように唇を歪めた。眼鏡の奥の双眸は、鈍器があれば一切の迷いなく振り下ろしているだろうぐらいの苛立ちを隠しもしない。 穏やかだった店内に、肌がぴりつくような空気が広がって行く。 「ちょっと群青。あなたからも言ってやってよ」 「仕事は引き受けよう。しかし俺もあの依頼人の態度は気に入らない。謝罪もしない」 「やっぱり黙ってて」 しかし群青さんは平然と言葉を続ける。 「態度を改めなければ次は指を折ると伝えろ」 「特別に小指からか親指からか、どっちからがいいか選ばせてやるぜ」 「どっちも黙ってて」     
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