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ふくれっ面の牧野さんのあとに、草薙さんが続いていく。
「じゃあ梶によろしくな。あんまり根詰めると禿げるぞって伝えといてくれ」
最後尾についた群青さんが低い声で静かに言った。
「ハルによろしくと伝えておいて欲しい」
モッズコートを着込みながら、草薙さんが呆れたように言葉を投げる。
「おめぇはホントそればっかだな。オレに言っとけよ、帰ったら会うんだから」
「お前にも言うし、彼らにも言う」
きわめて真面目な顔で群青さんは言い切った。
陽気にベルが転がった。
扉を開けてはいってきたのは、スーツ姿の梶さんだった。
「うわっ、牧野さん」
出会いがしらの遭遇にわかりやすくたじろいでいる。
彼女が引きつれている草薙さんたちを見ると、なにか納得したように「あぁ」と頷いた。
「また先輩がなにかやったんですね、お疲れさまです」
「なにもしてねぇって」
梶さんの傍らを通り過ぎて行きながら草薙さんが凄むが、梶さんは完全に斜め聞きで流している。そして最後にすれ違った群青さんに小さく頭を下げた。
「群青さんもいつもお疲れさまです」
「ハルによろしく伝えておいてくれ」
扉のベルが鳴り響くなか、草薙さんのあきれ果てた声が聞こえて来る。
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