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 2月。そう、2月。今年もやってくるのだ、あの忌々しきバレンタインというイベントが。たとえ世界から戦争が無くなろうとも争いが起きる日が。  だからこそ。だからこそ俺は行動を起こす。 「しーいなさーん!チョコをいただけないでしょうか!」  周りが野次馬とならないよう慎重に、しかし大胆に隣の席に座る椎名に対して紛れもない本心を伝える。  椎名は「全く、本当に…」と小さく呟きながらもこちらを向いてくれる。流石は義理堅い椎名だ。 「チョコください!義理でもいいので!」  彼女がこちらに向き直ったので改めて伝え直す。何よりも大事なことだからだ。そして譲歩もする。我ながら謙虚だ。 「大体さ、藤木。そもそも今日持ってきている訳がないじゃない」 「まさか!?嘘だ!!椎名の義理堅さはどこに!!」  小声でもリアクションはしっかりと。大きくてを広げて驚きを表現した。  だからだろうか。周りの苦笑いする声が聞こえるが気にするつもりはない。 「てかさ、今日はまだ13日じゃん」  冷たく言い放つ椎名の目線は黒板の右側、つまりは日付が書かれている部分に注がれている。  そこには無機質な字で2月13日(土)と書かれている。     
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