四 虚栄

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 柴田、原、遠山の三人があぜんとして一条芙由子を凝視した。彼女の顔立ちの中に、氏家達子のおもかげを探す視線だった。 「あんた、氏家達子の隠し子なんだろ。だからあんたを、達子は専属カメラマンとして抜擢したんだろ」  佐伯が遠慮のない口をたたけば、柴田幹彦は記憶をさぐって愕然とした。 「そういえば、達子はわたしと離婚した直後、建築家と浮名を流していた。モデル活動もなにもかも、休止状態だったはずだ。彼女がデザイナーとして大成したのは、そのブランク期間に勉強したのだと思い込んでいたが、そうか、子どもを産んでいたのか」  みなの注目を一身に浴びて、しばらく一条芙由子は視線を膝に落としていた。 「ばかばかしい……」  肩を震わせて、つぶやいた。 「なによ、自分で暴露してりゃ……世話ないじゃない……」  顔をあげた一条の目には、きつい光りが宿っていた。
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