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「専属カメラマンとして抜擢? なにさまのつもりよ、氏家達子は。あの女はわたしとパパを捨てたのよ。パパはわたしを育てるため、どんなに苦労したか……。あの女はわたしが自分の娘だと知って、後押しすることを条件に口を閉ざすように命じたわ。それなのに、こんなチャライ男に打ち明けるなんて、どうかしているわね」
佐伯憲太郎をにらんだ一条芙由子の顔立ちは、なるほど氏家達子に似ていた。
「恨みによる毒殺なら、わたしにも動機がある。だけど、あんただってそうでしょ。知っているのよ」
「なにが言いたいんだよ」
「氏家達子はあんたが若いうちは、ただ飼いならしているだけよ。ペットみたいにね。映画の端役の話しがあったでしょ。あれ断ったのは氏家達子だから」
自分の将来を遮断され、激怒するかと思われた佐伯だったが、そのことはすでに知っていたらしかった。きつく唇をかみ、小声で「あのクソババアが」とつぶやいただけだった。
原静江が苦々しげに立ち上がった。
「つまり、ここにいる全員が、氏家達子を殺す動機があり、チャンスもあったというわけね」
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