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自殺するつもりはない。
かならず生還しなければならない。
すべては「転身」するために。
これは賭けだった。
デザイナーとして本当の才能もないまま脚光を浴びることができたのは、つねにスキャンダラスな話題を振りまいてきたからだ。
柴田との結婚と離婚、原静江の仕事を奪い、恋人を奪ったのも、妻子ある気鋭の建築家を誘惑し破滅させたのも、また佐伯のような若い男を恋人にしているのも。
すべては自分が華々しくスポットライトを浴び続けるためなのだ。
だが、いまはどうだ。
若さを失い、女としての盛りはすぎた。
すでにデザイナーとしては使い物にならないだろう。
だが、転身はできる。しなければならない。
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