一 山荘にて

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 その中で、氏家達子がもっとも好むチョコレートがピラミッドを模した形に飾り付けてあったのだ。  達子は右腕を振り回した。アクセサリーで飾られた手首がチョコレートのピラミッドにぶつかる。ダイス型のチョコレートがばらばらになり、床にぶちまけられた。 「達子さん。しっかりするんだッ」  昏倒した彼女にまっさきに駆け寄ったのは、年下の恋人である佐伯憲太郎だった。  カメラマンとしてこのパーティを取材しにきた一条芙由子は、とっさにシャッターを切る。 「おい、こんなときに撮影なんかするなよ」  達子の体をかばってしゃがみこんだ佐伯が、一条芙由子をにらんだ。  すでに達子は息をしていなかった。その表情は苦悶の余韻をきざんだままだった。  佐伯は達子の肩をゆさぶり、うなじに手をあてて脈をさがしたが、反応はない。 「どういうこと? さっきまで楽しくおしゃべりしていたじゃないの」  原静江がつぶやいた。  横殴りの雨が窓をたたく音を聞きながら、一同はぼうぜんと氏家達子の遺体を見下ろした。
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