四 虚栄

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四 虚栄

「確かに虚栄心の強い女だったわね」  原静江が言った。 「アメリカ帰りのわたしをパーティに招待したのだって、自分の成功を見せびらかそうという魂胆だったのでしょ」 「思い出したよ」  柴田幹彦が顔をしかめた。 「原静江……。きみが達子とモデルで張り合っていた当時のことだ。きみ、恋人や仕事を達子に横取りされて、アメリカへ逃げたとマスコミに……」 「いやな言い方ね」  原静江は葉巻を灰皿に押し付けた。 「そういうあなただって、当時は達子に二股かけられていたのよ」 「達子はそういう女だ。きみにいじめられたかわいそうな女のふりをして、こっそり仕事を横取りし、デザイナーに取り入った。そうやって大物にのし上がったのだ。わたしと結婚し、すぐに離婚したのだって悲劇の破局を演出したにすぎない。自分の地位をゆるぎないものにしようと、常に画策する女だ」
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