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1 懸想
初夏。
放課後の放送室は十数人の放送部員が、大会に向けて朗読やアナウンスの練習をしていた。
小さなスタジオで顧問の南方と朗読の練習をしていた大我は、電源の入ったマイクを前にして淡白な表情で南方に告げた。
「みなちゃん、俺と付き合って」
白石大我は不真面目な生徒であった。
肩まで伸びた黒髪を外ハネにセットして、制服のブレザーはその日の気分で着崩す。
幼さを残した精悍な顔立ちで、愛想も良く女性受けしたが、自分の意思が最優先で度々トラブルを起こしていた。
授業中も早く終わらないかと願うばかりで集中しない。
ただ、教師に対しても愛想が良く成績も最悪な状況は免れていたので、問題児として扱われることはなかった。
大我は勉学に関しては乗り気ではないように見えながら、学校へは嬉々として登校していた。
高校二年、社会科の選択授業。
スマートフォンのソーシャルゲームで戦国武将を好んで使っていた、という理由だけで大我は日本史を選んだ。
授業を真面目に受ける気などなかったのだが、担当の教師が面白い人間だった。
南方圭紀という男。
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