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やや長い癖毛、地味な面構えに地味なシャツとスラックス。
年齢不詳な容貌だが、三十五だと言う。
気だるげに教室に入ってきて、素っ気ない挨拶から授業が始まる。
「僕ね、平安時代の初期は農民だったんだけど、あの頃竪穴式住居に住んでたんだよ。京都っぽいとこに住んでたのはごく一部の人間だから」
南方は遠い過去に自分が何をしていたのかを教えてくれる。
もちろん冗談であるのだが、生徒に『今日は外してるよ』と声を上げられても懲りずに時折過去の自分を語る。
絡まれながらも授業が滞ることはない。
授業が終わってからも生徒が彼の元に集まり、早く帰らせてと言いながら気さくに会話をしてから帰って行く。
素朴で教師であることを振りかざさず、親しみの持てる人間だった。
大我は他の授業は大抵まともに受けていなかったが、南方の授業だけは最後まで話を聞いた。
先日部活動に所属せず遊び暮らしていた大我は、南方が顧問を務める放送部に入部した。
南方は三年の担任だったため接点が少なく、授業だけでは足りなかった。
「ねー、みなちゃん。見本見せて」
入部したばかりの大我は、なんの知識もないまま放送コンクールへの出場を言い渡された。
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