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マイクの前で朗読の原稿を読まなければならないらしい。
向かいに座る南方は、有能な部長に言われるままに放送部室である放送室の二畳ほどのスタジオに押し込められて、部員一人一人のアナウンスや朗読のアドバイスをさせられていた。
昨年までの顧問が異動し名ばかりの副顧問から顧問になっただけで、機材の操作に関しては理解していたがコンクールに関する知識は大我とほとんど差がなかった。
「そういうの部長にしてもらってよ。友達なんでしょ」
マイクで部長を呼んだが、コンクールの準備が忙しいと言って来てはくれない。
ため息を吐く南方に大我は機嫌の良い笑みを見せた。
教室より近い距離。
南方と時間を気にせず会話ができることが嬉しい。
南方のなにがそれ程までに気に入っているのか、理由はわかっていたが改めて認識したくはない。
楽しければそれで良かった。
「ほら! 早く! 読んで!」
両手で原稿を突きつけると、南方は渋々それを受け取ってマイクスタンドを自分に引き寄せる。
マイクを挟んで原稿を持って、困った顔のまま口を開いた。
『この山の夏は暑いらしい。少し歩いただけで汗が吹き出るようだ。車の騒音がない分、蝉の声が一層うるさく感じた』
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