1 懸想

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「白石、男好きなんだよ。しかもさ、いつもなんの前触れもなく告白しはじめるんだ」 「女とも付き合ってたことあるだろ」  バイなのだと何回言えばわかるのかと、大我は泉を睨め付ける。  そして南方に向き直ると一転、期待に満ちた表情を見せた。 「俺、みなちゃんのこと大好きなんだよ。付き合って欲しい」  南方は突然の出来事な上、周囲の目が多いためやや戸惑った。  だが。 「残念だけど、付き合えないんだよ。そういう決まりなんだ」  大我に対してほのかに笑いかける。  実際はそのような決まりごとなどなかった。  十年以上教師をしていて、なぜか二度ほど生徒から想いを告げられたことがある。  どちらも今の言葉で切り抜けていた。  男子生徒からの告白は初めてであったが、断ることに変わりはない。  ただ、以前はこのような公衆の面前ではなかった。  落ち着いて話を聞き言い(さと)すことが、できなかった。 「なにその決まり。無視しなよ」  大我は断る際の南方の物言いにも優しさを感じて、一層想いを募らせる。  部活中にマイクの前で告白をするほど奇抜なだけのことはあり、決まりだからとすぐに諦めることはしなかった。 「無視しなって……。付き合うって言ってないでしょ」     
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