2 惑乱

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2 惑乱

 泉は大我を引き連れて、社会科資料室に立ち入った。  窓際のデスクで振り向く南方、壁際のテーブルに生徒が二人。  彼らは書類を作成しているようだ。  南方は今日、部活動に顔を出さなかった。  引率時以外は特に顧問が不在でも問題ない。  泉は手にしていた封筒を南方に手渡す。 「書類、一応確認して下さい」  南方が封筒の中を覗くと、大我はポケットに両手を入れて、興味もないのに南方の横で一緒に覗く。  肘と肩が接触すると南方は、 「なに?」  と、やや困った顔で笑う。  振られてから一週間ほどたった。  もちろん諦めてはいないが、改めて告白はしない。  大我は好きだと伝えただけで満足していた。  これからは言葉にせずとも、軽く態度で示せば好きだと言っているも同然なのだと思っている。  大我を横目に泉が笑顔で語りだす。 「みなちゃん、昨日白石に一年生とインタビュー撮ってきてもらったんだけどさ、白石愛想(あいそ)いいから、みんなすげー話してくれるんだよ!」 「んー、それ、そんな喜ぶとこなの?」 「喜ぶとこだよ! インタビュー面白いの撮れたら番組も面白くなるんだよ!」     
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