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「あー、どっちもだよ。みなちゃん優しいから、ガツンと断れなくて困った顔してるし」
大我はペットボトルをデスクに置くと、泉に歩み寄った。
自分はチャラいが泉は歌のお兄さんっぽい、と言ったことがある。
朗らかな印象で、歌も対話も上手い。
放送部に入ってからアナウンサーになりたいかもと言い出して、非常に熱心に部活動に取り組んでいた。
同じく鞄からペットボトルを取り出した泉の顔を、大我は間近から覗き込み、微笑む。
「みなちゃん、泉と同じだな」
そしてデスクに手をつき、泉の頬に口づけた。
「はぁ?」
泉は焦って頬を抑え、一歩、大我との距離をとった。
「何年前の話だよ? まだ諦めてなかったの?」
「三年前。俺、諦めるって言ってないし」
「でも今は、みなちゃんが好きなんだよな?」
「どっちも同じくらい好きだなー。俺が惚れっぽいの、知ってんだろ」
泉は目をそらしてペットボトルのキャップを回す。
中学三年の時に、南方と同じように皆の前で告白された。
友達なら良いが恋人は無理だと断ったが、なにかと側に寄ってきて、余裕でキスもせまってくる。
皆が見てるからそれはやめろと言うと、ピタリと止まった。
それきり、諦めたのだと思っていたが。
一口喉を潤すと、大我が右腕で肩を抱いてきた。
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