2 惑乱

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「あー、どっちもだよ。みなちゃん優しいから、ガツンと断れなくて困った顔してるし」  大我はペットボトルをデスクに置くと、泉に歩み寄った。  自分はチャラいが泉は歌のお兄さんっぽい、と言ったことがある。  (ほが)らかな印象で、歌も対話も上手い。  放送部に入ってからアナウンサーになりたいかもと言い出して、非常に熱心に部活動に取り組んでいた。  同じく鞄からペットボトルを取り出した泉の顔を、大我は間近から覗き込み、微笑む。 「みなちゃん、泉と同じだな」  そしてデスクに手をつき、泉の頬に口づけた。 「はぁ?」  泉は焦って頬を抑え、一歩、大我との距離をとった。 「何年前の話だよ? まだ諦めてなかったの?」 「三年前。俺、諦めるって言ってないし」 「でも今は、みなちゃんが好きなんだよな?」 「どっちも同じくらい好きだなー。俺が惚れっぽいの、知ってんだろ」  泉は目をそらしてペットボトルのキャップを回す。  中学三年の時に、南方と同じように皆の前で告白された。  友達なら良いが恋人は無理だと断ったが、なにかと側に寄ってきて、余裕でキスもせまってくる。  皆が見てるからそれはやめろと言うと、ピタリと止まった。  それきり、諦めたのだと思っていたが。  一口喉を潤すと、大我が右腕で肩を抱いてきた。     
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