救いなき街

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「先生、何してるの?」 サキが聞いてきた。 「お前等こそ、何してるんだ?」 「エミが心配で、さっきエミの家行ってきたんだ。でも、会えなくて」 それは、当たり前だ。 エミは、もういないんだから。 「先生は、パトロールとか?」 今度はヒカリが聞いてきた。 「まぁ、そんなところだ」 「先生なら知ってるんじゃない?この辺りで事件があった話?」 「なんだ、それ?」 「女子校生を襲う変態がいるって、都市伝説」 サキが私の顔を覗き込むように尋ねた。 「・・・いや、知らないな」 「えぇ!先生くらい長く学校いたら知ってそうだけど」 「・・・どこから聞いたんだ、その話」 「学校ではみんな知ってるよ。それに、お姉ちゃんが高校通ってる時から広まってたみたいだし」 「・・・私は知らなかったわ」 ヒカリは俯いたまま答えた。 「ヒカリも聞いた事あるって思ったんだけどな」 まさかサキから話を聞くとは、思わなかった。 ヒカリはまだ俯いたままだった。 「じゃあ、私こっちだから」 交差点に差し掛かると、ヒカリが言った。 「じゃあ、また明日ね。ヒカリ」 「・・・帰り、気を付けろよ」 ヒカリが私に一瞥し、頭を下げた。気のせいか、別れ間際の彼女は、怯えた様子だった。 「ねぇ、先生」 「何だ?」 「さっきは、ヒカリがいたから話出来なかったんだけど聞いていい?」 「構わないぞ、何だ?」 「先生は、エミが学校に来てない本当の理由知ってるんでしょ?」 「まぁな」 「何なの?」 「それを聞いてどうする?」 「友達として、気になるじゃん。学校では、いろんな噂広まってるよ。お父さんの会社が倒産して夜逃げした。ヒロキとヤって、子供ができたとか」 「噂ってすごいな」 「ホント!でも、全部嘘だと思うし、本当は別な理由があると思うんだ」 「いや、当たらずも遠からずだな」 「えっ!?何が?」 「その噂だ」 「どういう意味?」 「相手はヒロキじゃなくて・・・」 「じゃなくて?」 「私だけどな」
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