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そう言って自分の右手を上げて、真っ直ぐある方向を指し示す。少女の斜め後方だったので、その指の先を確認する為に少年から手を離して、再び体を反転させると、店先で争う男二人が見えた。
「ケンカ、ですか?」
「ええ。直ぐに片方の男がもう片方の男を刺します。可哀想に、そのまま死んでしまいますよ」
少年が言うや否や、少女がケンカをしている男に向かって走り出した。
「ケンカは!止めてくださーい!」
叫びながら、男二人に突撃して行く少女に驚いたのか、一瞬ケンカが止まる。しかし、また直ぐにー今度は少女も巻き込んでケンカが始まってしまった。
「だから!止めてください!」
「ウルセェ!」
男が所持していた小さな刃物を思い切り少女めがけて振り下ろす。危険を察知した少女が頭を腕で守り、ぎゅっと瞼を固く閉ざす。
少女のピンチを眺めている少年は動かない。なぜなら、彼は彼女が死なないという事を知っているからだ。
少女の腕に刃物が突き立てられ、派手に血が噴き出した。勢いよく血がドバドバと出るので、男二人は怖くなって其々どこかへ逃げ出した。
それを見送ってから少女に近づくと、血溜まりの中に倒れこんでいた。傷口からの出血は止まっていたので、特に処置をすることもなく彼女を抱き起こして、そのまま抱えて街を歩く。血塗れの二人に人混みが騒つくのが分かったが、大した問題では無い、と少年は気にせずに歩き続けた。
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