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B「──そのホットドッグ、毎回食べてて飽きないのか」
A「ん、飽きない。 ……っていうか、今日が初めてだし」
B「今日が、初めてか」
──嘘だ。
……いや、彼女からしてみれば嘘を言ってる自覚なんて無いんだろうけど。
寒さで?を赤くした彼女が僕を振り返り、憂慮を滲ませるのとは裏腹にホットドッグを頬張って恍惚を浮かべる。
A「美味しいなあ、これ」
B「美味しそうに食べる姿、明日も見せてよ」
A「散財させろっての?」
B「いや、安心したいんだ」
A「……最近さ、変だよ。 何かあったの?」
たしかに、僕の学校での彼女に対する接し方は変わっている。 それは僕でも自覚している。
だけど僕は「何でもないよ」とゴーグルをいじった。
A「ゴーグルいじるときって、隠し事してるときだよね」
歩く足が止まりそうになった。
彼女はしたり顔で「幼馴染ナメんな」と、ケチャップを口端に付けて言った。
僕は白い息を吐き、延々と降り続く雪を仰いだ。
B「……僕からすれば、よく隠し通せてるって褒めてほしいくらいだよ」
A「やっぱり! 私が何でも受け止めてあげるから、ゲロッちゃいなよ」
ホットドッグを突き付けるようにサムズアップする彼女に、僕は心臓が縛られるような感覚を得た。
……ああ、やはり。 彼女は覚えていないのだ、と。
しかし仕方のないことであるのは、分かっている。
僕が最初に訊いたのは、現実を受け止めたくない自分可愛さから出たものだ。
A「私が食べ終わる前に言わないと、もう一つ奢ってもらうから」
たしかこれは三回目に言われた。
あのときは僕が打ち明けずに、結局もう一つを奢ったのだ。
そしてその夜に、彼女は死んだ。
原因は分からない。
分からないからこそ、僕がいるのだ。
これで五回目。
彼女が死ぬ度にやり直される世界で、僕は最善の一手を打つために、今日も冷たい雪を踏みしめた。
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