第1章 美人

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「おはよ!!」 「優那、おはよー」 教室に入ると、たくさんのクラスメートが声をかけてくれる。 男子も女子も。 中学まではこんなことなかったな。 きっと私、なんとなく根暗なイメージを持たれてた。 高校進学と同時に、母が選んだセンスの悪い眼鏡をコンタクトに替えてよかったなと思う。 同じ中学の子は最初、ちょっとビックリするような目で優那を見たけれど。 教科書やペンケースを机にしまい終わると椅子に腰かけ、 「ふぅ」と息をついて教室を見渡してみた。 一つの携帯をみんなでのぞき込んで笑っているギャル。 足を机に上げたまま、ふんぞり返ってしゃべっているチャラ男。 優那の方を見ていた男子がいたから、 サービスと思って視線を合わせると、彼は慌てて違う方向に目をやった。 窓際の席に、読書に没頭している女子がいた。 漫画?小説? 優那が中学の時にしていたような眼鏡をかけていて、 黒く長い髪を後ろで一つに束ねている。 小太りで、輪郭がもうおばさん。 この年であごの下に肉がたまってるとか救えない。 丸い背中、大根のような腕・・・ この前テレビで見た、動物園にいるパンダみたいだなと思った。 名前はたしか「美里」だっけ? あの容姿で、名前に「美」という字が入ってるとか拷問でしかない。 美里の未来を想像してみた。 勉強できても、性格よくても、きっと彼氏も出来ないんだろなー。 一人で一生懸命働いて、 誰からも特に注目もされず、声もかけられず、 女としての悦びも知らないまま、 週末にはああやって本でも読んで平凡な人生を歩んでいくんだろなー。 「私はごめんだわ」 そう思った。
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