六章

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その手に握られたナイフを見て、愕然とする。 「……これで俺を傷つけて、支配すればいい……」 掴ませようとしてこちらへ向ける柄を、 「……何を、言ってる……」 はねつけて、つっ返す。 「……傷つければ愛せるのなら、これで俺を痛めつけて……恐怖で屈服させろ……血が流れれば、おまえも本望だろう……」 「……何を……バカ、か……」 ナイフの柄を無理やりに俺に握らせて、 「……刺せ」 低く(なだ)めすかすように、声が落とされる。 「……そうすれば俺は、おまえを(おそ)れ受け入れられない。だから……」 「……バカなのか、貴様は……」 小刻みに震えるナイフを掴んだ手が、彼の肌に(いざな)われる。 その鋭い刃先から目を離せないまま、 ナイフは寸前まで迫った……。
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