プロローグ

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「かいー!部活行くで!!」 「うーい」 気だるげな返事をして、俺は隣の1年3組からわざわざ声をかけに来た、谷東咲真(たにとうさくま)のもとへ向かった。 俺達の所属している鳥取県立季山(きやま)高校の水泳部は、もともと強豪校だったらしい。 だが、今では3年の部員は4人、2年は2人、そして1年は、俺と咲真、1組の南都鷹秋(なんとたかあき)の3人だ。顧問である本結清(もとゆいきよし)は水泳未経験者なので、指導者が必要なわけだが、強豪校時代のコーチはもう何年も前に引退したらしく、その時から今に至るまでコーチを引き受けてくれる人がいなかったのだ。そして、そのまま廃れて今に至る。 「なぁ今日のメニュー何だろうな」 「知らん。でも昨日はタイム測ったし、もしかしたらリレーのメンバー発表されるかもしれんで」 そんな会話をしていると部室に着いた。 「ちっす」 珍しく2年生が先に来ていたので、挨拶を交わし、いつもの場所で着替える。 俺がカッターシャツを脱いでいると咲真が、 「あれ、岸本先輩、そのポスターなんすか」 咲真の目線の先にはA4サイズの画用紙があった。 「あーこれか?いや、そろそろマネージャー欲しいなって思っとっただが。だけぇ向山(むこうやま)に描いてもらった」 「そうなんすね。確かにマネージャーいねぇと不便っすよね。それにしても、向山先輩絵うまい」 「いやいや、そんな大したことないで」 いつも控えめな向山先輩だからそんなふうに言っているが、実際ポスターに描かれている女の子のイラストは綺麗だ。 「かわいい女子が来るといいっすね」 俺はそれだけ言うと、ゴーグルとタオルを持ってプールへと向かう。
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