0人が本棚に入れています
本棚に追加
「かいー!部活行くで!!」
「うーい」
気だるげな返事をして、俺は隣の1年3組からわざわざ声をかけに来た、谷東咲真のもとへ向かった。
俺達の所属している鳥取県立季山高校の水泳部は、もともと強豪校だったらしい。
だが、今では3年の部員は4人、2年は2人、そして1年は、俺と咲真、1組の南都鷹秋の3人だ。顧問である本結清は水泳未経験者なので、指導者が必要なわけだが、強豪校時代のコーチはもう何年も前に引退したらしく、その時から今に至るまでコーチを引き受けてくれる人がいなかったのだ。そして、そのまま廃れて今に至る。
「なぁ今日のメニュー何だろうな」
「知らん。でも昨日はタイム測ったし、もしかしたらリレーのメンバー発表されるかもしれんで」
そんな会話をしていると部室に着いた。
「ちっす」
珍しく2年生が先に来ていたので、挨拶を交わし、いつもの場所で着替える。
俺がカッターシャツを脱いでいると咲真が、
「あれ、岸本先輩、そのポスターなんすか」
咲真の目線の先にはA4サイズの画用紙があった。
「あーこれか?いや、そろそろマネージャー欲しいなって思っとっただが。だけぇ向山に描いてもらった」
「そうなんすね。確かにマネージャーいねぇと不便っすよね。それにしても、向山先輩絵うまい」
「いやいや、そんな大したことないで」
いつも控えめな向山先輩だからそんなふうに言っているが、実際ポスターに描かれている女の子のイラストは綺麗だ。
「かわいい女子が来るといいっすね」
俺はそれだけ言うと、ゴーグルとタオルを持ってプールへと向かう。
最初のコメントを投稿しよう!