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 また死体が発見された。これで今年になってからは初めてだが、去年に続き三人目であり、三人共同じ様な場所で同じ様な死を遂げたことになる。  現場は、東北の日本海側の地方都市から東に七十キロばかり入った山の中。三人共、道路脇の空き地に車を留めたままにして山道を登り、途中で倒れた状態で発見されていた。  死後半月から一ケ月が経過しており、死因は三人共凍死であった。  発見したのは、現場の山の所有者である木下さん。長い間空き地に放置された車を不審に思い、所有する山に登り、その途中で死体を発見していた。  警察は現場の状況から事件性は無いと判断し、すべて事故死として処理していた。遺書も無く、家族の話からも自殺の可能性は低いようだった。  死亡した人達の車が留めてあった場所は、田舎にしては珍しいほど広い二車線道路沿いにあるが、近隣に家屋がほとんど無いため、通りかかる車は極端に少ない。亡くなった三人は、たまたま仕事でその道路を通ったに過ぎず、お互いに関連性は無い。  では、なぜ彼らがその空き地に車を留めたままにして山に登り、死体で発見されるに至ったのか。警察の捜査でも、その理由は判明せず謎として残されていた。  地元の住民は、連続する不審死を気味悪がり、山の魔物が三人に憑りつき死においやったのではと噂し、その道路を通る者はますます減っていった。  新聞記者の私は、偶然その噂を聞き、平和な山村で起こった連続不審死に興味を持ったが、日々の仕事に追われるうちに頭から消えていった。
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