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春の柔らかな陽射しが前庭を照らす。国の花である白百合が他よりも少しだけ早めに開花している。駆け出し騎士のローゼンベルグの左胸にも、白百合をあしらった記章がつけられていた。
後ろから不意に声を掛けられた「ローゼンベルグ、また空を見ていたのね」鈴が鳴るような涼し気な声。立ち上がり振り返ると、そこには白い服に身を包んだリリア王女が心配そうな表情で彼を見ていた。
「リリア王女殿下、お恥ずかしいところをお目にかけました」
ローゼンベルクが王国の正規騎士として就任して五年。難関の選抜試験である武技大会で見事優勝して、望みの配属先を問われた。
望んだのは最高の誉れである近衛騎士でもなく、武勇を誇れる白百合騎士団でもなく、才能を振るえる辺境騎士団でもなく、リリア王女の従騎士だった。
同僚は考え直せと連日彼の家にやって来ては将来を解いたが、ついに首を縦に振ることは無く就任式を迎える。そして傍に仕えて二年、リリア王女は十五歳となり思っていた以上に美しさを増した。
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