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「殿下は止めてって言ったわよね、ここには他に誰も居ないわよ」
王女と従騎士の約束。二人きりの時は堅苦しい話し方をしない、そう願われて渋々承知したいきさつがあった。怒った表情になって左手で前髪を払う。
王女の癖で、無理に感情を作っている時にやるのをローゼンベルグは知っていた。二年は短いようでとても長い、ニ十五歳になった彼にとっても王女にとっても。
見ていた空は西側、何故そちらを見ていたのかを思い出すと胸が痛くなった。こうなることはずっと前から解っていた、いつかくる日が近づいているのを噛みしめている。
「申し訳ありませんでしたリリア様」
――私はリリア様を心からお慕いしている。だからこそ己を律して王国の騎士たる振る舞いを貫かねばならない!
ベルシュタイン王国から西に山を幾つも越えた先、フランシス王国があった。平地が広い隣国は比すると強力で、これと争うのはベルシュタイン王国にとって非常に良くない。
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