中年騎士の思い出

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 感情を表に出さずに模範的な言葉を紡ぐ。空は青くてとても透き通っていた、嵐で行き来が出来なくなるならばそれでも歓迎と見詰めても変わることは無い。  王女が嫁ぐ先は他国の有力者と相場は決まっている、それが隣国の王だっただけのこと。以後はフランシス王国の騎士が彼女を護衛する。 「ねぇ、ローゼンベルグは私と別々になるって悲しくはないの?」  ピクリと眉を動かして彼は唇を結んだ。悲しくないはずがない、そんな考えは馬鹿げている。  王女に向き直り片膝をついて「私は……私は、リリア様に忠誠を尽くし生涯を捧げる所存でございます」騎士の誓いをする。 「ありがとうローゼンベルグ、その忠誠絶対に忘れないわ。これ、貴方が持っていて」  差し出される白百合をあしらった銀のプレート。王女の個人的な意匠が施された、彼女の証だ。  恭しく両手を差し出して「有り難く拝領致します」渡されたソレを受け取った。今生の別れになるかも知れない、何せ王女は戻ることが許されないから。つまりは人質の類でもあるのだ。 「ほら立って」 image=512848054.jpg
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