鳴き声がしたら

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「ねぇ、圭織(かおり)ちゃん。昨日先輩から聞いたんだけどさ、この学校、恐い噂があるって知ってた?」 中学生になって一ヶ月ほどが過ぎたある日の放課後、部活を通して友達になった美咲(みさき)ちゃんが突然そんな話を振ってきた。 「恐い噂? 知らないけど、七不思議みたいなやつ?」 「ううん、違う違う。犬の話だよ。知らない?」 「犬? 知らない。どんな話なの?」 時刻は夕方の六時半過ぎ。 部活が長引いたせいですっかり遅くなってしまい、校舎内は寂しく感じるほど人の気配が薄い。 梅雨の真っ最中ということもあり、朝から空を覆い続ける雨雲のせいで、電気の点いていない廊下はジメジメとした薄暗さに包まれていた。 「あのね、今から十年くらい前らしいんだけど、この学校に野良犬が住み着いてたんだって。すごく人懐っこくて、先生とか生徒にも可愛がられて人気者だったらしいの」 「うん」
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