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それはとある1月の雪の日の午後。
「ねぇ、君。手、冷たくないの?」
突然1人の制服姿の少女ーーアメリア・スコットにそう話しかけてきた少年は田中 泉(たなか いずみ)という日本からの留学生だ。
2人は同級生で同じ学校に通っていて、2人とも13歳だ。(両者とも早生まれではない。)
ここはイギリスのイングランド。この国というか地域ではアメリアたちの学年は8年生という扱いを受ける。8年生は日本で言うと中学1年生だ。
話を戻すが、アメリアは今その黒に近い紫色の大きなリボンでポニーテールに結った淡いブラウンの髪を揺らしながらホットドッグを食していた。包み紙の部分を素手で持って。
「あら、田中くん。奇遇だね。こんなところで会うなんて。」
「いやいや、僕たちさっき学校で会ったでしょ…じゃなくて! こんなに雪降ってるのに手袋しないで手が冷たくないのかって僕は思ってるんだけど…。」
そう、泉の言う通り今日は白くて淡い雪がたくさん降り、この街が雪景色へと化しかけている。雪が降っているくらいなので気温は0度以下なわけで素手だと普通の人間なら手がかじかんでしまう。
「ふふふ。田中くん、そう言う君はマフラーも巻いてないし上着も着ていないじゃん。」
確かにアメリアの言う通り、泉は制服のブレザーの上に上着はいっさい身に纏っておらず、マフラーも首に巻いていないが、ブレザーのポケットにしまった手を手袋で包んでいる。(ブレザーの袖で見えない。).一方でアメリアは制服のブレザーの上にダッフルコートを身に纏い、首には白いマフラーを巻いている。
「身体は別に冷えてもいいんだよ。家に帰ってストーブであったまればいいし。あと、僕、自分で言うのあれだけどこれでも寒さには比較的強いし。それに、かじかんだ手を元に戻すのってめんどくさくない?」
「そんなの…美味しいものが食べられるなら気にしないよ!」
「そうなの?!」
「うん! だから、田中くんもホットドッグ食べようよ。あのお店で売ってるよ。今日は特別に私がおごってあげる。」
「そんな…悪いよ。」
「いいのいいの! 気にしないでよ。私が田中くんに勧めたんだから。」
「君がそう言うなら…お言葉に甘えるね。」
「うん! じゃあ決まり!」
そうして2人は、アメリアがホットドッグを購入したホットドッグ屋さんに向かったのであった。
(終)
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