素敵な彼女

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「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ! 朝比奈さん!」 スタスタと僕の前を歩く彼女は先程買った(といっても僕のおごり)ホットドッグを咥えながら何か目ぼしいものはないかとウィンドウショッピングを楽しんでいる。 「別に私はそんなに早く歩いてるつもりはないんだけど。ヒロくんが歩くのが遅いんだよ。それと!」 彼女は追いかける僕の方を急に振り返り、人差し指を僕の鼻先に突きつける。彼女の可愛らしい顔が、目と鼻の先にあって、僕の胸はどくんと跳ねた。 「その呼び方禁止! 仮にも今デート中なんだから、夕って呼びなさいっ」 そう言ってウィンドウショッピングへと戻っていく彼女の後ろ姿を見て、僕はさっきから胸が高鳴りっぱなしだった。 彼女の名前は朝比奈夕、つい先程意を決してデートのお誘いをしたら、彼女は意外にもあっさりとオーケーしてくれて、二人で街中デートと洒落こむことになったのだ。 あ~。幸せだなあ~。 彼女の幸せそうな顔を見ているだけで、僕の顔もついつい綻んでしまう。 「あ……可愛い」 ふと足を止めた彼女の視線の先に目をやると、リングを販売する屋台のお店があった。 彼女はその一つを手に取ると、恨めしそうに眺めていた。 僕は彼女の隣まで来てさらっと値段を確認する。 9800円。 破格の値段というわけではないが、流石に痛い出費と言わざるを得ない。 「なあ、そこの彼氏。こんなに可愛い彼女がここまで欲しがってるんだ。男を見せないでいーのかい?」 店員としてはここまで来ればもう一押しで販売できるかもしれないのだ。痛いところをついて買わせようという魂胆だろう。そして僕の心も見事にグラついていた。 だが、当の彼女はというと。 「あ、いや、ごめんなさい。大丈夫よ。行きましょうか」 恨めしそうに眺めていたリングをさっと手放して、他の所へとそそくさと行ってしまったのだった。
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