(十)

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 お父さんへ  ありがとう! お父さん。小夜子、とっても嬉しいの!  お父さんのおかげで、ステキな体験をしています。  ステキなモデルさんとお友だちになれました。  お父さん、大好き!                小夜子  読み終えた茂作から大きなため息が洩れた。 「そうか、喜んでいるか。そんなに喜んでいるのか……。正三! ほんとに大丈夫なんじゃな。何かあったら、責任取らせるぞ」 「大丈夫ですよ、茂作さん。えっ!? 責任ですか? 責任取ります。取らせて貰います。ありがとうございます」  畳に頭をこすり付ける正三に、「ちょっと待て。何かあったら、のことだぞ」と、茂作が念を押した。 「大丈夫ですって、きちんと責任取りますから」 「だから、何かあったらだと言ってるだろうが」  しかし正三の耳には、入らなかった。 「そうですか、責任をね。それじゃ、そういうことで」  と、上の空で辞した。 「まあのう、佐伯本家の跡取りでもあるし、良しとするかのう。しかし小夜子にも困ったものよ。チャラチャラした娘にならんけりゃ、いいんじゃが」
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