密かに紡がれた1ページ

2/3
前へ
/3ページ
次へ
──朝早くから登校する時, 僕の姉は大抵,登校途中で買い食いを始める. 通学路に美味しそうな匂いを放つ店があるのがいけないんだ,と, 前に謎理論をぶつけられた. そんな姉が, 今日も何かを買って食べながら歩いている. 「はむっ……もぐもぐもぐ……」 「……はぁ.姉さん,食べながら歩いてちゃ危ないよ?」 「んむ? 大丈夫だいじょーぶ! ちゃんと前見ながら食べてるし!」 と言っているそばから,姉は俯きながら何かを食べつつ歩いていた. 「全然前見てないじゃん…….」 「えー,そんな事ないよー!! あー……美味しい……」 どうやらもう,食べてるその何かに夢中だった. 「……で,結局それはなんなの……?」 パっと見はただのホットドッグ……にしか見えないけど,姉いわく,「そんな単純なモノじゃないよー!!」……らしい. 「ふっふっふ……弟よ,これは新時代に生きる料理!! エクストリーム海鮮キムチ鍋パンだ!!」 「・・・・・・姉さん,風邪ひいた?」 「体調を心配された!? 本当にそうなんだってば!!」 「……いや.いやいやいやいや!!」 見た目完全にホットドッグだよ!? ウインナー乗ってるし!! ケチャップかかってるし!? 誰がどう見てもホットドッグ── 「………………嘘……だ……!?」 ──姉からそのパンを1口もらった僕は, あまりの衝撃に,その場でピタリと硬直してしまった. 口に入れた瞬間に広がった辛さと,海鮮のダシのうまみ. エビやホタテ,白菜などの食感. 後味はスッキリ. しかし,間違いなくこれは, ……海鮮キムチ鍋だ. 間違いなく,海鮮キムチ鍋だった. 「ほらー!! 本当にそうだったでしょー!?」 僕の頭の中は混乱していた. 見ていたもの,手に取ったもの……と, いざ口の中へ放り込んだものの情報があまりに違いすぎた. 「……あ,そろそろ始業のチャイムが鳴っちゃうよ!」 「…………」 「はーやーくー!! ほら,行こー?」 少し間をおき,頭の中を駆け巡った姉の声で, 僕はハッと我に返った. 「置いてくよー?」 「あ,ごめんごめん!! ──って,」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加