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──朝早くから登校する時,
僕の姉は大抵,登校途中で買い食いを始める.
通学路に美味しそうな匂いを放つ店があるのがいけないんだ,と,
前に謎理論をぶつけられた.
そんな姉が,
今日も何かを買って食べながら歩いている.
「はむっ……もぐもぐもぐ……」
「……はぁ.姉さん,食べながら歩いてちゃ危ないよ?」
「んむ? 大丈夫だいじょーぶ! ちゃんと前見ながら食べてるし!」
と言っているそばから,姉は俯きながら何かを食べつつ歩いていた.
「全然前見てないじゃん…….」
「えー,そんな事ないよー!! あー……美味しい……」
どうやらもう,食べてるその何かに夢中だった.
「……で,結局それはなんなの……?」
パっと見はただのホットドッグ……にしか見えないけど,姉いわく,「そんな単純なモノじゃないよー!!」……らしい.
「ふっふっふ……弟よ,これは新時代に生きる料理!! エクストリーム海鮮キムチ鍋パンだ!!」
「・・・・・・姉さん,風邪ひいた?」
「体調を心配された!? 本当にそうなんだってば!!」
「……いや.いやいやいやいや!!」
見た目完全にホットドッグだよ!?
ウインナー乗ってるし!!
ケチャップかかってるし!?
誰がどう見てもホットドッグ──
「………………嘘……だ……!?」
──姉からそのパンを1口もらった僕は,
あまりの衝撃に,その場でピタリと硬直してしまった.
口に入れた瞬間に広がった辛さと,海鮮のダシのうまみ.
エビやホタテ,白菜などの食感.
後味はスッキリ.
しかし,間違いなくこれは,
……海鮮キムチ鍋だ.
間違いなく,海鮮キムチ鍋だった.
「ほらー!! 本当にそうだったでしょー!?」
僕の頭の中は混乱していた.
見ていたもの,手に取ったもの……と,
いざ口の中へ放り込んだものの情報があまりに違いすぎた.
「……あ,そろそろ始業のチャイムが鳴っちゃうよ!」
「…………」
「はーやーくー!! ほら,行こー?」
少し間をおき,頭の中を駆け巡った姉の声で,
僕はハッと我に返った.
「置いてくよー?」
「あ,ごめんごめん!! ──って,」
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