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真実
「ねえ、キミはあの座敷童…であってる?」
彼女が泣き止んだタイミングで聞いてみる。
―質問をする前に、名を名乗るのが先じゃろう? お前様よ。
口元に着物の袖を当て、不機嫌そうに彼女は俺を見る。そうだ、名乗るのを忘れていた。
「俺は高坂聡。この蔵の持ち主である高坂茂の孫で、今日はこの蔵を片付けに来たんだ。」
彼女は俺の名前を聞いて驚いたような顔をしていた。
―お前様、儂をここに閉じ込めた茂の孫なのか?!
彼女の言葉で初めて知る。蔵に閉じ込められていた原因がまさか俺のじいちゃんなんて…。
「そうだ、キミの名前教えて欲しいな。」
ずっと聞こうと思っていて忘れていた。彼女は名前を教えてくれるだろうか。
―千代じゃ。なあ、お前様。どうにかお前様の力で儂を外に出してくれぬか?
外に出してくれと言われ千代を縛る足枷を外すが千代は首を振る。
―これだけじゃダメなのじゃ。茂が儂にかけた呪縛を解いてもらわんと…。
呪縛? 千代の言う呪縛とは一体何だろうか。
それを察したのだろう、千代は俺のもとに来て裾を引きながら言う。
―お前様、儂の言う呪縛は言霊の呪縛じゃ。
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