赤い紙袋

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 美帆は、高校に通うようになり、学校の最寄り駅で毎朝すれ違う義人のことが気になっていたという。  だが、義人が警察の者であることは、わからないまま、ただすれ違うだけの想いを馳せる男性として見ていた。  高校3年、最後のバレンタインデー。  内気な性格の美帆が、呼び止めて声をかけることなんて出来なかった。  そこに、チャンスがやってきた。 「この紙袋を渡してほしい」  美帆は、これを義人に渡すものだと思い込み、エレベーター前にいた義人に声をかけた。  だが、肝心のチョコまでは、照れが先に押し出され、渡すまでいかなかったという……。 「そうか……別の言い方をすれば、やつらに邪魔されたようなもんだな」 「でも、そのお陰で、中堂さんって名前と、刑事さんの仕事をしてるってことを知ることができました。それと……こうやって、声をかけるきっかけも出来たので……」   義人は、軽く笑みを浮かべ、「用意してくれたんだし……」と美帆が差し出した箱を、受け取った。 「ありがとう。よかったら、その紙袋もくれない?」 「あ……はいっ!」  美帆は赤い紙袋も義人に渡すと、思いきってこう告げた。 「あ……じゃあ、私と付き合っていただけますか?」  美帆の輝いた目をしっかり見据えて、義人は言った。 「まあ、付き合う……てなれば、君が、学校を卒業してからだね。俺、警察官だからね。その時に、もう一度、君の気持ちをきかせてもらうよ」  美帆は、頬を紅色に染め、笑顔で頭を下げた。 【了】
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