赤い紙袋

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 また、この日が来てしまった……。  新年が明け、早々と一ヶ月が過ぎ、節分を迎えた。 「恵方巻き、うまかったなぁ……」と豆まきで、はしゃぐ歳でもないため、福を得るため無言で食べた太巻きの小さな余韻に浸るのも束の間、その日は無情にもやってきた。  社会人7年目の中堂義人(なかどうよしと)は、しつこいほど、カレンダーを眺める。 「昨日は、13日。今日は……15日ではないよな。なぜ、14日がこの世に存在するのだろうか?」  考えるだけ無駄な疑問を抱きながら、今日という日を指で触れる。  2月14日。バレンタインデー。  生まれてから、26年間、バレンタインデーの成績は、本命0、義理0、納得いかない18。  納得いかないのは、母と祖母からのものだ。  しかも、成人してからは、それすらもない。  チョコが欲しいわけではない。義人は、他人からの気持ちが欲しいのだ。  本命は一度もらえば、たぶん結婚を決める勢いをつけてしまうだろうから、この際、義理でもいい。  贅沢は言わない。  上は29、下は20の他人の女性から、恥ずかしそうに「これ、受け取って下さい」の声がほしい。  もちろん、声だけでなく物が無ければ意味がないのだが……。
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