赤い紙袋

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 自分にも、ようやく春が来た……と義人は、紙袋を守るように両手で抱えた。  周りには、まだもらってなさそうな男性が、電車を待っている。  心の中で、俺はもうもらったぞと叫ぶ。なんなら、自慢気に見せびらかしたい。  しかも、くれたのは女子高生だ。  これは奇跡、そう呼ぶにふさわしい。  職場に到着すると、直ぐ様、紙袋を持ってトイレの個室に入る。  洋式便器の蓋を閉め、その上に腰を下ろす。 「なにが入ってるんだろぉ~、なんか重みはあるけど……」   紙袋から長財布ほどの箱を手に取る。だが、チョコとは思えないような重さが、手を下に引っ張る。 「なにこれ?」  義人は、それを膝の上に置くと、包装紙をゆっくりと剥がしてみた。  重さ、そして、固さから、これはチョコではないなと感じとった。  包まれていたのは、白くて、厚みのある長方形の箱だった。  義人は、そっと上蓋を開けてみる。 「え……」  現れたのは、トランプほどの大きさの3枚の金色の板だった。 「これって……金?」  表面には、「999.9」との表示が彫られているため、義人は紛れもなく金塊だということは、わかった。しかも、その下にもう1枚ずつ重なっている。すなわち、金の板が、6枚入っていた。   「え、え、え、ちょっと待て、ちょっと待て、これ、チョコじゃないの? チョコかと思ったらなんだこれ!?」
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