赤い紙袋

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 気持ちを切り換えて、仕事に専念しなければ成し遂げようとしていることも、前に進めることはできない。  だが、どうしても、意識はそっちにいってしまう。 (内緒で換金してしまえば……いかん、ダメだダメだ)  無意識に頭を振ってしまう。 「どうした、義人? 頭がどうかしたか?」  5つ上の先輩に心配されるが、今あのことを話すと、仕事に支障が、出る恐れがある。 「いや、ちょっと考えごとしていただけです。ちょっと、変なこと考えちゃって……すいません」 「次は、製薬会社の女の社員さんのところに行くから、しっかり話を聞いておかないとな」 「はい、すいません」  車で移動中にも、ふと、よからぬことが頭を過る。 (あの子が、俺に金を託したのは、ひょっとしてなにかに狙われてるとかじゃないだろうか? いや、だとしてもそんな風には見えなかった……受け取って下さいってきたもんなぁ。なんのつもりで……) 「おい、義人!」  先輩の声だ。 「あ、はい」 「早くしろ、信号が青だ」 「あ、すいません」  慌てて、アクセルを踏む。  あまり考えすぎるのもよくない。  やっぱり、あの女子高生が、好意としてくれたのだろうか?
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