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見れば自分と同じような特徴がある。
長髪で白いダウンジャケット。しかも、下に着ているスーツも、同じような濃いグレーをしている。
義人は、エレベーターに乗るのかと、立ち位置を変えた。
だが男は、義人の方へ、近付いてきた。
(え……こっち来た……)
義人は、身構える。
男は目の前で立ち止まり、義人に言った。
「悪いが……その紙袋を見せてくれないか?」
「えっ?」
義人の紙袋を持つ手に、力が入る。
男は紙袋に手を伸ばす。
「ちょ、ちょっと、なんですかあなた! いきなり、人の荷物を……」
義人は、紙袋を後ろに避ける。
男は、ズイっと義人に近寄る。
「それを素直に渡せ。さもないと俺はお前に危害を与えなければならなくなる」
「どういう意味かな?」
「腕の1本で許してやる」
「なら、腕1本までなら、まだ余裕があるんだな?」
義人も負けまいと、言い返した。
「なに?」
「あの高校生の女の子と、あんたはどういう関係?」
「どうでもいいだろ。早くそれを渡せ」
「そう簡単に、渡すわけにはいかないな。ちょっと話を聞かせてもらおうか」
義人は、スーツの内側に手を入れた。
「俺はこういうものだ」
義人が出したのは、警察手帳だ。
男の顔色が、変わった。
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