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大泣きで酷く取り乱して逃げ去った様子を思い返して、すぐにハッとする。
やっぱりおかしい。
あんな状態でどこかに立ち寄ってるとはとうてい思えなかった。
「あ、お茶はいいです。柚葉探してきます。後で取りに寄りますんで、玄関に荷物、置かせてもらってもいいですか?」
返答を待たずにすでに荷物を下ろしにかかっている彩香。
「え? それはもちろん構わないけど、彩香ちゃん傘持っ――――……てる? 雨降るらしいわよ、って言いたかったけどやっぱりもう居ないか」
荷物を置くやいなや一目散に玄関から駆け出していき、遠くの方ですでに点にしか見えなくなっている後ろ姿に、「毎度のことだわね……」と千草は穏やかに微笑んでいた。
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