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「目に見えないものをまるで至高のものに押し上げた人間たち、『平和な生き残り』」
彼は本を音読するかのように呟き、くすぐったそうに微笑んだ。
白いシーツが日光の下で気持ちよく揺れるように。
「目に見えないんじゃ不審なくせに、人の手にかかればそれが至上になる」
「とりあえずこの上なくなる」
言い換えた彼女を見て、彼が肩をすくめた。
「――ほんとすき、それ」
「……」
不覚にも顔が熱くなってきて彼女はうつむいた。
「ナイフしまってこなきゃ」
逃げるように口を開く。
ナイフをしまってからは、彼の興味はナイフから逸れたようだった。
戻ってきた彼女を抱き寄せてくれる。
それから彼女の着ている服を丹念に見始めた。
また調査をする学者のような目で。「これは何なのだろう」と。決して彼の前で着るのは初めてじゃないのに。
カーディガンのボタンを引っ張って、取れないと分かると諦めて手を離した。ブラウスの襟に顔を寄せてきた。じっと動かない。織り目をじっくり観察しているように。
どれもこれも、見るのは初めてじゃないだろうし、どういうものなのかや、着脱の仕方などは絶対に分かっているだろうに。
彼女の胸だけが動揺して激流のように血を押し出す。
おかげで赤面していた。
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