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「脳はあっても、それを使って考えたこととかそこから出てくる個性とか、魂なんて見えないんだから。手に取って確かめようがないのよ」
「……何言ってる?」
「そのままよ。深い意味はない」
「じゃあ、みおちゃんは人を見た目だけで判断するの、か?」
「――そこまで言ってない」
でも、そう言われるとどきりとする。
確かにそう広げられてもおかしくない。実際に見えるものでしか判断しないのかと、問われてもおかしくない。
「魂は目に見えないけれど存在することは確かじゃないの」
「そうだな。作文でも書けば何とか可視化できる」
「作文書く? 何年何組、誰それって……」
笑い混じりに返したら、彼は真顔で「原稿用紙がない」と言い出した。それですぐにやる気をなくしたのか、ため息をついてぐったりテーブルに肘をついた。
そっと手を握ってみる。
しばらく彼の手は彼女の手を探るように撫でていた。これは何でできているのだろうと精査する学者さながら。
やがて、「同じかもしれない」と悟ったように手の動きは止まった。「自分の手と同じかもしれない」と。
「内面を重視するのが良いみたいな風潮も、全然問題はないけれど、よく考えたらおかしな風潮だよな」
「平和な生き残りだよね」
「すき、それ」
「……すき……?」
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