第一章 吸血王

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「俺、寝てただけなんだけどなあ」 そうつぶやいたのは、この世界の神である。 光が一切差し込まない部屋には暗闇だけが、漂っている。 300年の眠りから覚め、起きてみたら、何も見えないのである。 そう、ほんとに何も。 感じるのは乾いた空気と冷たい床の石。 「ま、いいか」 そうつぶやくと、神はまた床に就いた。 「確か、健人があっちの世界から、もうすぐ来るはずだし、来たら見つけてくれるんだっけ?」 誰もいない石室に神の御言葉が響く。 だが、反響してきた自分の声を聴く前に、すでに神は眠りについてしまっていた。 次の瞬間、神が眠る石室の上に作られた神殿に、光とともに人間たちが降り立ったのは偶然ではなかろう。
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