第一章 吸血王

3/13
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
この世界に来て、初めて感じたのは太陽の目を突き刺すような白光だった。 だがそれも10分前の話。 この10分、俺は周りの状況を分析し、情報を収集していた。 そして今、俺、幕楽高校2年菅谷健人はため息をついた。 今どういう現状か? 簡単に言うと、どっかの馬鹿が理科室にある装置を作動させてしまったのだ。 作動させた結果、神殿らしき場所にクラスごと移動してしまったのである。 造りからして、ヨーロッパにでもやってきたのだろうかと錯覚してしまいそうになる。 桜子先生がジェスチャーをがんばっているのを見ればわかるが、言葉は通じない。 電子機器系統は使えるものの電話、メール、インターネットなどの通信系統は残念ながら全く使えない。 つまりどこかわからない土地に言葉が通じない状態で放り込まれたわけだ。 まあ今頃学校は装置作動の時のすさまじい光でマスコミが騒がしいことしてるだろう。 1週間したら救助でも来るか。 そこで、俺は考えを一回止める。 もしかして、それまでの間……何もすることがない? 俺は軽くガッツポーズを決めた。 いい観光ができる。 それも無料で。 喜びがこみあげてくる。 「全く唯斗があの装置のボタンを押さなけりゃ、今週末は海に行けてたのにな」 余裕を取り戻した俺はそうやって作動させた張本人に軽口を叩く。 青くなってブルブル震えてる友達を少し緩ませたかったのだが・・・・・・。 「ごめん、この状況から脱出できたらちゃんと埋め合わせするから」 「わかってる、期待させてもらうよ」 クラスの大多数から視線が突き刺さるのを感じた。 大変な状況なのに、モブがクラス2のイケメンを責めるなんて許さない。 あかり以外の女子の目はそう言っている。 あかりはいつも通り優しいまなざしだ。 いったい何があったか知らないが、俺が痴漢にボコされた後からことあるごとに視線が合う。 ただクラス1の美少女の視線にクラスの男子たちは気づいている。 男子たちの目、特に朱莉ファンの目はオタクがクラス1の美少女に近づくなって言っている。 こっちだってそんな気はないのにね。 まあ仕方ないからいつも適当に受け流してるけど、邪魔なのは確かだ。 いやな雰囲気の時は消えるのがいい。 「ちょっとトイレ探してくる」 唯斗にそういうと俺は丸い円の外に出た。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!