第一章 吸血王

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俺は遠くに手放されていた意識を取り戻すと目を開けそうになって、心臓の上に乗せられた手に気付く。 どうしたんだろう。 そして目を開けた瞬間、顔を上気させた誰かの唇が俺の唇を塞ぐ。 まさか、人工呼吸されてんの? あー、やらかしたのかな・・・? 俺は瞬時に判断して目を閉じた。 もし目を開けていた場合。 その誰かがキスするのを待っていたと思われ、後始末が大変だ。 となるとしばらくして突然気づいたことにするのがベストだろう。 ただそれが最も悪い決断だとは気付かなかった。 そう。 そのキスした奴があかりだったのだ。 さらに・・・。 俺が目を開けた一瞬に気付いたやつがいたのだ。 それがなんとも運の悪いことに、朱莉ファンのやつだった。 「朱莉さん、そのクズ、意識ありますよ」 雷が落とされた。 「えっそうなの?」 驚いた様子で朱莉が離れる。 いや、作戦の上では意識はないですよ。 ここではまだ意識がないふりでも通じるはず……。 「大変、まだ意識がないなんて」 またキスしてきた。 一体、こいつ何なんだ? 少し、イラっと来た。 これだと意識がなくてもぼこされる。 意識があったら…考えたくない未来が待っているに違いない。 その瞬間、左手の小指に激痛が走る。 痛っ。 ついに声を出してしまった。
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