第一章 吸血王

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俺は声を上げてしまった。 目を開けて確認する。 案の定、坂木が左手の小指を踏みつけていた。 「やっと起きたか。このあかり様に近づこうとする変態野郎」 クラスメートごときに様付けてんじゃねえよ。 と、言ってやりたかった。 「オタクまじないわー」 「あかりのファーストキス奪うとかクズじゃね」 「…ファーストキス…」 後ろのほうで木谷涼香がぶっ倒れたのだがみんなはそんなこと知らずに俺を取り囲んだ。 「意識あって起きなかったんでしょ。」 「死ね、変態」 「クズ死んじまえ」 「やめてあげて」 あかりが叫ぶ。 それこそ、やめて。 ヒートアップするだけだから。 こういう展開は慣れてるし、こういう時の対処法もプロ並み。 口出しは無用。 「何で止めるんすか、朱莉さん」 「そうだ、なんでそんな女たらし、かばうんですか」 坂木よ、断じて俺は女たらしじゃない。 ここまで偶然がそろうと、これが仕組まれたものだった気がしてきたよ・・・。 はあ。 「だって、だって…」 あかりが泣き出した。 クラス一の美少女が泣いたのである。 いや泣きまねかもしれない。 非難の視線が一気に坂木に集まった。 ざまーみやがれ。 「朱莉、大丈夫か」 クラス一のイケメンがついに手を差し伸べた。
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