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勇馬が手を差し伸べた。
よし。
活路が開ける。
「ありがとう、勇馬君」
朱莉は差し出された手を取り、勇馬に抱きついた。
みんな雰囲気に酔ってしまっている。
今がチャンス。
俺はこっそりとその輪の中から逃げ出した。
いや正確に言うと逃げ出そうとした。
「おい待て菅谷」
朱莉を抱きつかせたまま勇馬が言った。
「君が僕の朱莉を泣かせた一番の元凶だろ。謝罪の言葉はないのか」
吐きそうなキザなセリフとともに断罪の刃が訪れた。
ウザッ。
俺は軽く舌打ちをする。
このくそ野郎。
せっかくけむに巻くチャンスだったのに。
「謝るほどのことじゃないだろ。もしここにいるのがお前だったらどうだ。みんな今みたいにポーッとしてるだろうよ」
狭間あかり、お前が俺にとっての元凶だ。
ここでの俺の立場がどうなろうともこいつを遠ざけなきゃいけない。
遠ざけなきゃ、もっと悪くなるのは目に見えている。
だから、俺は切れた。
「こっちが助けを求めてないのに勝手に変なことしやがって、邪魔なんだよ」
みんなが信じられないように俺を見てる。
「お前らが、容姿がいい者同士仲良くしときゃ、俺には何にもなかったんだ」
あかりの目がうるうるし始めているがここでやめるつもりはなかった。
「そういうやつこそ、俺は一番嫌いなんだよ」
自分自身を追い詰めると知っていてもそういわずにはいられなかった。
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